雲中午睡庵

小さな庭いじりや子連れ山登りなど写真を添えて

【子連れ登山記2】小学6年生の娘と行く荒船山~修験道場の跡と絶壁からの展望~

4月の半ば、群馬と長野の県境にある荒船山に登った。
荒船山は北側が絶壁になって切れ落ちていて、そこから南は平らな台地が続く、遠くから見ると四角形に見える変わった形の山だ。
近くを通る国道254号線からは、北側の断崖がよく見える。

艫岩からの眺め
【データ】

<日付>2022年4月中旬
<ルート>内山峠ー鋏岩修験道場跡ー艫岩ー荒船山頂上台地(往復)
<メンバー>小学6年生の娘、その友だちとそのパパ
<難易度>基本的な三点支持で登れること

今回は、6年生の娘とその友だち、その父親の4人で行く。
この組み合わせ、元々は娘たちのお姉ちゃん同士が保育園で仲が良く、卒園して別の小学校になるけれど、たまに会ったりしたいね、というところから始まって、それぞれ妹も同学年で同じ保育園に行っていたから、やがて妹も一緒に行くようになり、お姉ちゃんたちは中学に上がる頃からあまり付き合ってくれなくなって、今では妹たちとパパの組み合わせで落ち着いている。

1.登山口から鋏岩修験道場跡

登山口は国道254号線の旧道の内山峠にある駐車場。
雑木林の中の稜線を南へ向かう。僕の住む埼玉の平野では、桜も散り、すっかり新緑の季節になっているけれど、山の上はまだ芽吹いていない。

稜線は所々切れ落ちた崖になっていて、そんな場所には道路でよく見かけるガードレールが設置されていた。山の中で見るガードレールはかなり違和感がある。
けれど、そんな場所はたしかに足元が崖になっていて、天気が良い時はいいけれど、足元から風や雲が吹き上げてくるような時(そういう場所は大体風の通り道になっている)は、危ないかもしれない。

それにしても、ここまでガードレールを担ぎ上げた人がいるんだよね、と思う。

1カ所、僕の持つ地図には書いていなかったけれど、稜線を通る道と巻き道が並走する場所があった。
行きは尾根道、帰りは巻き道を通ったけれど、巻き道は斜面に沿って斜めになって道の狭い場所が多く、尾根道の方が歩きやすい。

2.鋏岩修験道場跡

ところどころナイフリッジ状になっている個所があったり、短い梯子を登ったりしながら歩き、崖の下が平らな広場になった場所に出る。

鋏岩修験道場跡:崖の下に岩屋がある

崖の下には人が入れるような穴が3つほど開いていて、雨風のしのげる岩屋になっている。広場には、建物の礎石らしき石が10ほど等間隔に並んでいる。

どうやらここが地図に載っている鋏岩修験道場跡のようだ。

岩屋の1つは、入り口に柱のように木の棒が建てられている。こういった岩屋にはこういう柱のあることが多いけれど、泊る時に幕を張ったりするのだろうか?
それぞれの岩屋の中には、何かを祀るように祭壇状に石が並べられている。

今でも時折ここを修業の場として寝泊りする人がいそうな気配だった。

鋏岩修験道場跡の岩屋

広場には建物の礎石のような丸い石が並ぶ。こちらはすっかり苔むしていて、建物が無くなってもう何十年も経っているのだろう。今では登山者の腰かけに格好の大きさだ。

建物の礎石だろうか・すっかり苔むしている

崖もやはり所々苔むしていて、そのせいか岩自体も少し緑がかって見える。
細かい堆積物の中に少し大きな石が混じったような岩で、そういえばテレビの「ブラタモリ」で火山の火砕流が堆積した岩は、火山灰の中に噴火で飛び散った石や岩が混じってこんな風になるというような話をしばしばしていた気がして、帰宅後に検索してみるとこの辺りの岩はどうやらその通り凝灰岩のようだ。
(下仁田自然史館研究報告
https://www.shimonita-geopark.jp/shizenshikan/190530kenkyuhoukoku4.html)

こういうのはクイズみたいで、当たると楽しい。

3.鋏岩修験道場跡から艫岩

鋏岩からしばらく行くと、いよいよ断崖絶壁の艫岩の上を目指して登っていく。

といっても、一般の登山等は岩を直登する訳ではなく、崖の横から登っていく。(一度でも艫岩を見たことのある人ならば「そりゃそうだ」と思うはず。)

鎖のついた岩場を数ヶ所登ると頂上台地に出る。
鎖場は大人ならば難しくないし、子どもも小学6年生ならばどうってことはない。
小学校低学年でも基本的な三点支持で登れれば大丈夫だと思う。

頂上台地に出ると突然平らになる。
平らな道を歩いていると、突然「キケンのぞくな」という立札が現れる。「のぞくな」と言われると気になってしまうのが人情で、登山道から踏み分け道を少し進むと、木々の間から眼下の展望が見え始め、自分が崖の上の台地にいることを思い出す。
崖の間近まで近づこうとは思わない。

4.艫岩の展望台

やがて雑木林の中に避難小屋が見え、艫岩の展望台に出る。

視界を遮る木々の間を抜けると、目の前に大展望が広がる。
近づけば足下は絶壁になっているはずだが、自然の崖に柵などあるはずもなく、とても近づこうという気になれない。

艫岩からの眺め

眼下にはうねるように国道254号線が線を伸ばし、北には雪の筋を残した浅間山が黒く見える。
北西には遠く北アルプスの山並みも伸びている。鹿島槍五竜岳、白馬岳と後立山連峰。槍・穂高は雲に隠れてしまっている。
八ヶ岳の見えそうな辺りも雲に覆われている。

天気予報では、南から曇ってくるという予報。朝、埼玉を出る時も曇っていて雨も覚悟していたのに、ここまで晴れた景色を見られるとは思わなかった。
やはり子ども連れだと、日ごろの行いが違うのか、よく晴れると、同行の父親同士で話した。

昼食を食べていると、次々に登山者がやってくる。

皆、ここに着くと、恐る恐る崖の方に近づいていくけれど、ぎりぎりまではなかなか近づけない。崖の際に寄っていく人を見ていると、こちらまでハラハラしてしまう。

5.頂上台地

艫岩は登るにせよ、麓から眺めるにせよ、荒船山を代表する景観だけれど、荒船山の頂上はここではなく、頂上台地を30分ほど南に歩いた場所にある。

昼食後、頂上へ向かう。

頂上台地は本当に平らで登山道と言うより散歩道のようだ。
流れている小川も深く谷を刻むことはなく、一跨ぎで越えられる。

頂上台地を流れる小川、崖の上とは思えない

気持ちも自然と緩んで、父親同士はしゃべりながら並んで歩き、しばらく遅れて子どもたちが並んで歩く。少し離れても道は平らでまっすぐだから、ついてきていることは分かる。

頂上台地の上の道:平坦で道は広く余裕で2人並んで歩ける

頂上の経塚山の分岐点まで来たところで、娘の友だちが足が痛いと言い出した。
僕は荒船山は学生時代に一度登っているから、娘の友だちの父親に、折角だから子どもは見ているので頂上まで往復しては、と勧めた。うちの娘にも聞くと、ここで待っていると言う。
結局、頂上へは娘の友だちの父親だけ往復し、残りのメンバーは頂上を踏まずに下山した。
娘の友だちも幸い足は大事無く、無事駐車場まで戻った。

6.神津牧場に立ち寄り帰宅

下山後、神津牧場に立ち寄り、ソフトクリームを食べてから帰った。

別れ際、娘の友だちに「また一緒に行こうね」と話すと、残念ながらあまり色よい返事は得られなかった。

6年生になった子どもたち、あとどれくらい一緒に遊んでくれるだろうか。

帰り際、国道254号線の駐車スペースから。左の大きな崖が艫岩。右側の三角形が修験道場跡のある鋏岩。夕方には曇ってしまった。