7月の終わり、浅間山へ出かけた。
浅間山は言わずとしれた、今も噴煙をたなびかせる火山。けれども登ってみると、火山のイメージにとどまらず、麓の森、外輪山との間には緑の高原が広がり、山頂付近は火山と、様々な山の魅力を楽しめる山だった。
【データ】
<日付>2022年7月下旬
<ルート>天狗温泉浅間山荘-火山館-賽ノ河原分岐-前掛山山頂(往復)
<時間>登り4時間30分、下り2時間20分
浅間山は、噴火警戒レベルによってどこまで登れるか規制がかかる。2022年7月の噴火警戒レベルは「1」で火口から500mまで近づくことができる。
その中で一番高いのが前掛山で標高2524m。登山禁止になっている浅間山の山頂が2568mだから、かなり近い高さまで登れる。
浅間山は近年もしばしば噴火しているから、僕の生きている間、本当の頂上には行けない気がするので、実質的には頂上と言っていいだろう。
1.出発~火山館まで、木漏れ日の森を行く
浅間山は埼玉から日帰りで行くにはやや遠い。
朝4時過ぎに起き、出発は5時。それでも夏の朝は早く、もう夜が明けている。
関東平野の天気は快晴、運転しながら目指す浅間山が、妙義山のごつごつとした岩山の向こうに、朝の光を浴びて頂上から白い煙を青い夏空にたなびかせているのが見える。
きっと素晴らしい一日になる、心の中にそんな予感の高まるのが分かる。
今年春に登った荒船山の辺りからは、山の向こうから雲が流れ落ちてきていた。長野県側は雲海が広がっているのかもしれないと思っていると、やはり想像通り、長野県側の佐久平の辺りは雲の中だった。
けれども、登山口に向かって山麓を登っていくと、再び夏の青空に戻った。
天狗温泉・浅間山荘に車を駐車し、朝7時40分、登山開始。
登山口からしばらくは、木漏れ日の森の中を歩く。
登山口から30分ほどで、一ノ鳥居に着く。
この道は昔から登られていたのだろう、鳥居のほかにも、石の道しるべや、石碑が登山道の所々に残っている。
道端には花もたくさん咲いている。
これはツリガネニンジンだろうか。他にもいろいろと足元に小さな花が咲いていて、目を楽しませてくれる。マクロレンズを持ってくれば良かった、とも思ったけれど、そんなことをしているといくら時間があっても足りなくなりそうだ。
一ノ鳥居から30分ほどで、不動の滝に着く。
木漏れ日と、沢の瀬音、セミの鳴き声に包まれながら、夏の朝の森を歩く。
不動の滝を過ぎるとすぐに二ノ鳥居を通り過ぎる。この辺りから、道は段々と急な登りになっていく。
急な登りを30分ほど行くと、森林限界が近いのか、木々がまばらになって草原が現れる。
天気は相変わらず快晴で、夏の青空と高原の緑のコントラストが心地よい。
標高が高いので吹く風も涼しく、平地の酷暑を束の間忘れさせてくれる。
火山館のすぐ下で、沢を渡る。沢は水と一緒に火山の鉄分でも流れ出ているのだろうか、赤茶色に染まっている。
周りの石が白いだけに尚更、毒々しい色に見える。この辺りは硫黄の匂いも強かった。
沢を越えて少し歩くと、火山館という小屋に到着。ここの1階は噴火の際の避難シェルターになっているそうだ。
2.火口原の草原と森
火山館から先はしばらく火口原のなだらかな道が続く。
少し行くと、黄色い丈の大きな花が群生していた。マルバダケブキだろうか。
特に黒斑山との分岐の辺りは、木々がまばらな草原になっていて、たくさんの花が外輪山の荒々しい崖を背景に咲いていた。
黒斑山の分岐を過ぎ、賽ノ河原分岐までは、また森の中を歩く。
森の奥から大きな動物の鳴き声が何度か聞こえ、姿は見えなかったけれど、他の登山者たちの話を聞いたところ、大きな鹿がいたそうだ。
賽ノ河原分岐を過ぎると、突然、木が少なくなり、正面に大きな浅間山の本体が現れる。
木々の生えていない、火山灰に覆われた姿は、浅間山が生きた火山であることを思い起こさせる。空を覆いつくすような大きさは圧巻だ。
②へ続く