↑前回の記事からつづき
3.硯岩から山頂
硯岩から一旦分岐点に戻り、今度は山頂を目指す。
分岐点の辺りは、硯岩と掃部ヶ岳の鞍部になっていて、なだらかな道が少しの間続く。
段々と針葉樹が少なくなり、新緑の木漏れ日が明るい。
つかの間のなだらかな道も、やがて山頂に向けての急登が始まる。
この急坂はずっと階段が付いているのだけど、階段の縦の部分の木はそのままに、段になるべき場所の土が流れ出てしまっている場所が多く、階段を登ろうとすると、飛び飛びになった横向きの丸太の上に足を乗せるようになってしまう。
もはや階段と言うよりフィールドアスレチックだ。
おまけに所々、階段の縦の部分になるべき丸太が横に傾いてしまっている場所もある。
当然、階段の隣には踏み跡が続いていて、すれ違う人は皆、階段でなくそっちの踏み跡を通っている。
道を広げるような歩き方はしたくないけれど、仕方ない。階段の隣を歩く。
急坂も最後の方になると、5歳少年も疲れてきた。
「あと10数えたら、もう電池が切れる」と言い出すので、声を合わせて数を数え、10を超えてもそのまま数え続けて誤魔化しながら、急坂を登った。
急坂が終わる辺りに、森が切れて岩が出ている個所がある。
振り返ると榛名湖が見える。榛名富士は木にさえぎられて、もう見えない。
登山口を出発して2時間。掃部ヶ岳山頂に到着した。
山頂は20人くらいなら座れそうな小さな広場になっていて、南側だけ木がなく展望が広がる。
頂上から見下ろす山裾は見渡す限り新緑。
遠くの山は、青く重なっていて見えにくいが、のこぎりのような形は妙義山、奥の方に横たわっているのは奥秩父の山並みだろうか。
さらにその右奥には八ヶ岳から蓼科山の山塊らしきものも見える。
4.下山、榛名湖の足漕ぎボート
頂上で持ってきた昼食を食べてから、元来た道を下山。
下山は、頂上から1時間ほどで駐車場まで下りてきた。
そこから車で湖畔に行き、子どもたちと約束していた足漕ぎボートに。5歳の少年は新幹線ペイントのボートを見つけると、「はやぶさがいい!」とそれを選んだ。
若い頃の僕ならば下山口でこういう景色を見ると「けっ、俗化した観光地め」と、自然の景色の方が正しいとするような原理主義的な考え方を持っていた気がするけれど、こうして子ども連れで訪れる年齢になってみると、子どもたちも楽しそうで、これはこれでいいなと思うようになった。
ピンクのスワンボートで笑顔でペダルを漕いでいる娘や、「パパもっと漕いで」と言う5歳児の真っすぐな喜びには、どんな親も抗えないだろうなと思う。
湖の真ん中に漕ぎだすと、榛名富士がひと際大きく見えた。