薬師岳から五色ヶ原へ向かう時、一番標高の高い薬師岳を過ぎれば、後は高原のなだらかな道が続くと登る前は思っていたのだけれど、実際はそうでない。スゴの頭、越中沢岳と2つの急登が続く。それを登りきると、別天地のような開けた縦走路、そして道は五色ヶ原に続く。
5.急登のピークを越えて爽快な縦走路へ
前日泊まったスゴ乗越小屋から、まずはスゴ乗越に下る。「乗越」は乗り越えるだから多分、峠みたいなものだろう。「スゴ」はよく分からないけれど、西側の谷が「スゴ谷」と地図に書いてある。なんだか凄そうなことは伝わってくる。
スゴ乗越からは急登が続く。斜面の南西側を登るので、朝のうちは日が当たらず涼しいのが救いだ。
振り返ると朝出発したスゴ乗越小屋が遠く見える。
(↓写真真ん中あたりの赤い屋根)
ゆっくりとした歩みでも、少しずつ積み重なっていると思える。
スゴの頭の頂上近くは岩場になっている。振り返ると薬師岳のカールが良く見える。
岩が露出して明るい灰色に見える山頂付近、一番左が南稜カール。尾根と尾根に挟まれここからだと横向きで少しわかりにくいのが昨日上から覗いた中央カール。薬師岳山頂と、その手前に一番高く見える北薬師岳の間にあるのが金作谷カール、だと思う。
特別天然記念物の薬師岳の圏谷群は4つのカールとなっているけれど、4つ目はよく分からない。
スゴ乗越から1時間ほどの登りでスゴの頭に到着。スゴの頭からはこれから登る越中沢岳が正面に見える。尾根を真っすぐ登る道が大変そうだ。
越中沢岳の登りは日差しで暑かった。
歩いていればそのうち着くと自分に言い聞かせて、ひたすら2時間ほど登る。
山頂付近にたどり着くと、突然、北側の景色が開ける。
なだらかな広い尾根が広がる縦走路は、南側の急登の厳しさと比べると別天地だ。
緩やかに傾いた緑の草原の五色ヶ原が遠くに見える。青空と白い雲の下、夏山の楽しさを集めたような道が続く。
6.五色ヶ原散策
五色ヶ原には2時すぎに到着。空はもう雲に覆われていた。山小屋に荷物を下ろし、天気を気にしながら草原を散策する。
夏の盛りを過ぎた草原はチングルマの綿毛が目立つ。綿毛は綿毛で良いのだけど、花の時期もきれいだろうなと思う。
山小屋からキャンプ指定地の方へ下り、別の道を通り草原を一周する。キャンプ指定地の道が室堂からの道と分岐する辺りには、トリカブトが群生していた。
山小屋へ帰り着く頃に降り出した雨は、夕方、やがて本降りになった。
夕食時間を過ぎても、雨脚は弱くなるものの雲は切れない。
今日は夕焼けは無理かなと思いつつ、ほとんど雨がやんだので外に出て待っていると、この日もまた夕焼けの神様はほんの10分ほど、赤く染まる高原の景色を見せてくれた。
雲と同じような高さだからか、夕焼は遠くから見るのではなく、夕焼けに包まれているような不思議な感覚になる。
この日の夜も雲はどかず星は見えなかった。
同じ部屋に泊まった登山者が翌日、僕が2日かけて歩いた距離を逆コースで1日で行くので3時半頃に出発すると話していた。
翌日は僕も最終日なので同じくらいに起きて、夜明け前の星を狙ってみようと思う。
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